いざという時、何をしたらいいの?

すっごく雨が降っている!

最近、ニュースで何十年に一度の大雨とか、非常に大型で猛烈(もうれつ)な勢いの台風とか、大気の状態が不安定でゲリラ豪雨(ごうう)が起きるよとか、大雨のニュースってよく聞くよね。

おっ、詳(くわ)しいね。環境破壊(はかい)や急激な開発なども原因の一つと言われているけど、近年世界的な異常気象や気候変動により、多くの自然災害が発生しているってよく聞くよね。日本も暑すぎたり寒すぎたり、信じられないような大雨が降(ふ)ったりして、いろいろな災害を引き起こしているね。この雨による災害についてみてみよう。

はい!

大雨による被害:河川の増水、洪水(こうずい)

雨自体は、昔から「恵みの雨」って言葉があるくらい、飲み水や農作物を育てたりする上で大切な自然現象だよね。ただし、一度に急激(きゅうげき)に降る雨は災害を引き起こすことにつながるの。最近は1カ月分の雨が1日で降(ふ)ったとニュースで言われたりするけど、短い時間にたくさんの雨が降(ふ)ることがあるよね。そうするとどうなるかな?

洪水(こうずい)!

正解!日本は国土が狭(せまい)く山が多い土地だから、雨が降るとすぐに川に水が流れてしまうんだ。だから、大雨が降(ふ)るとすぐに川が増水してあふれてしまったり、土手が壊れて川が氾濫してしまったりします。もちろん、そうならないように土手の整備や河川の整備もしているんだけど、想像しているよりはるかに多い雨が降ると洪水を引き起こしてしまいます。

平成27年鬼怒川の様子
出典:国土地理院
※途中で気分が悪くなったら、すぐに見るのをやめてください。

うわ~こえぇ~!

あと、最近は川で流木が橋などに引っ掛(か)かり、ダムみたいになって土手を越えて洪水(こうずい)になるケースもあるんだ。これは、森林整備が追いつかなくてしっかり根を張った木が少なく、山自体に水をためる力、保水能力というのが弱っていて、雨による地滑(すべ)りで川に大量の流木が流れ込んで起きるとも言われているんだ。

大雨だけじゃない災害っていうことね

いくつもの要因が重なって大きな災害を引き起こすのね。

雨による被害:住宅の浸水、道路の冠水

道路が冠水(かんすい)している!

資料映像:大雨による道路の冠水
出典:気象庁ホームページ

洪水(こうずい)が起きると、街の中もみんな水浸(びた)し、泥(どろ)だらけになってしまうんだ。床上(ゆかうえ)浸水被害(しんすいひがい)になると家の中も泥(どろ)だらけになってしまい、家屋や家財にも多くの被害(ひがい)を出してしまうんだ。大切なものもみんな処分(しょぶん)しなければいけないなんてことも起きるんだ。

うわ~。片付けるの大変だぁ!

大雨による被害:市街地の浸水(内水氾濫、地下街の水没)

川がないところでも洪水は起きるのよ。内水氾濫(はんらん)型といって、雨水は排水(はいすい)路や下水道などを通じて川に流されているんだけど、大体時間雨量50mmを超える大雨が降ると排水(はいすい)処理(しょり)が追い付かなくて、街中で水があふれてしまうの。

うわ~車も沈(しず)んでる。えぇ~!

大雨による被害:土砂崩れ

大雨による被害(ひがい)で怖いのが土砂(どしゃ)災害。一気に土砂(どしゃ)が岩や木も一緒(いっしょ)に押し流してきて、家屋や道路、橋まで呑(の)み込んで街を襲(おそ)うんだ。

これじゃぁ、前もって避難(ひなん)しないと逃げ切れそうにないな。

そうなんだ。発表される警報(けいほう)や避難(ひなん)情報をいち早く聞いて、早め早めに避難(ひなん)しないと命の危険があるんだ。その警報(けいほう)や避難(ひなん)情報を紹介(しょうかい)するね。下に行くほど緊急(きんきゅう)度や重要度が高いんだ。

1)警報(けいほう)・注意報
注意報・・・災害が起こるおそれがあるとき16種
警報(けいほう)・・・重大な災害が起こるおそれがあるとき7種
特別警報(けいほう)・・・警報(けいおう)の発表基準をはるかに超える重大な災害の危険性が著(いちじる)しく高まっている場合

2)避難(ひなん)基準
避難(ひなん)準備・高齢(こうれい)者等避難(ひなん)開始・・・災害が発生する可能性がある場合。避難(ひなん)の準備を始める。避難(ひなん)に時間のかかる人は避難(ひなん)行動を開始する。
避難(ひなん)勧告(かんこく)・・・災害が発生する危険性がある場合。避難(ひなん)を勧告(かんこく)←避難(ひなん)の強制ではない。
避難(ひなん)指示・・・避難(ひなん)勧告(かんこく)よりも緊急(きんきゅう)性がある場合。直接強制はない(市町村長の要求で警察等による指示もあり)

注意報や避難準備の時点で、災害の危険がある地域に住んでいるときは早めに避難したほうがいいってことね。

そうですね。災害が起きてからでは手遅(おく)れになるから、起きるまでに時間がある時に命を守る行動をとることが重要なの。

高校生のみなさんへ

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高校生向け

■エルニーニョ現象、ラニーニャ現象

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米のペルー沿岸にかけての広い海域で海面水温が平年に比べて高くなり、その状態が1年程度続く現象です。逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれています。ひとたびエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、日本を含め世界中で異常な天候が起こると考えられています。

エルニーニョ現象が発生すると、日本全体を暖かく湿った空気が包み込みます。そのため、大雨が降りやすく、各地で降水量が増えることになります。ラニーニャ現象が発生すると、日本には乾燥した空気が流れ込みます。そのため、梅雨が短く空梅雨の傾向があり猛暑になるといった影響があります。また、その年の冬は寒冬になることが多いといわれ、雪害が発生しやすくなります。

■台風とは

熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」と呼びますが、暖かい海面から供給された水蒸気が凝結して雲粒になるときに放出される熱をエネルギーとして発達し低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s(34ノット、風力8)以上となったものを「台風」と呼びます。

台風は地球の自転の影響で北へ向かう性質を持っており、上空の風に流されて動きます。また日本上空や周辺を流れる偏西風の影響で北東方面に進むことが多く、その新路上に日本列島が重なることが多いため、年間数個の台風が毎年上陸します。ちなみに、沖縄や日本近海の島の上空を通った時には「通過」といい、北海道、本州、四国、九州の上空を通った時には「上陸」という表現で伝えられます。

■台風の強さと大きさ

気象庁では台風のおおよその勢力を示す目安として、「大きさ」と「強さ」で表現しています。
「大きさ」は強風域(風速15m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲)の半径で、「強さ」は最大風速で区分しています。 さらに、風速25m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲を暴風域と呼びます。 台風に関する情報の中では台風の大きさと強さを組み合わせて、「大型で強い台風」のように呼びます。

強さの階級分け

階級 最大風速
強い 33m/s(64ノット)以上~44m/s(85ノット)未満
非常に強い 44m/s(85ノット)以上~54m/s(105ノット)未満
猛烈な 54m/s(105ノット)以上

大きさの階級分け

階級 風速15m/s以上の半径
大型(大きい) 500km以上~800km未満
超大型(非常に大きい) 800km以上

大型、超大型の台風それぞれの大きさは、日本列島の大きさと比較すると以下のようになります。

■スーパー台風

近年の台風が強さ、大きさとも衰えずに日本に接近するケースが増え、今後これまでの定義を超える勢力を持つ台風が上陸するのでは、といわれています。米軍合同台風警戒センターの定義する最も強い階級である「スーパー台風」です。最大風速が毎秒65 m/s(130ノット)以上といわれ、この規模の台風が上陸した際にはこれまでの被害規模よりも甚大な被害が発生するのではといわれています。

■高潮

高潮は発達した低気圧や台風が沿岸部を通過する際に海面が上昇する現象をいいます。さらに、低気圧の影響で暴風が吹き荒れ、波の高さや流速が加速され破壊力を増す「吹き寄せ効果」や、満潮の時間帯が重なることによってさらに海面が高くなるなど、干満差が大きい湾内部では大きな潮位変化が見られ、沿岸部に被害を及ぼします。

■河川氾濫とストレーナ現象

大雨による洪水被害で最も広範囲に被害を及ぼすのが河川の氾濫です。堤防の決壊やストレーナ現象と呼ばれる流木などが橋脚などの障害物に引っかかり、ちょうど濾過器のような状態になり上流部部分がダム化し、橋脚が破壊されたり、水量が増えて土手を越えて河川の氾濫を引き起こします。

■線上降水帯

雨雲(積乱雲)が次々と発生し、帯状の積乱雲群となりほぼ同じ場所に停滞することで、数時間にわたり強い雨を降らせることがあります。近年では平成26年の広島豪雨、平成27年の関東・東北豪雨、平成29年の九州北部豪雨で発生しました。その場所にいる人たちにとっては経験したことのない大雨となります。発生要因やメカニズムは複雑でまだ解明されていないことも多い気象現象ですが、発生の可能性は予報されつつあり、キーワードとして知っておくことで、早めの避難に結び付けられるようにしておきましょう。

平成26年の広島豪雨での雨量の推移

■土砂崩れ

大雨や融雪によって地下水が上昇した場合や地震などで地盤が緩くなった際に発生します。そもそも山の斜面は重力で斜面下方に引き落とそうとする力が働いています。しかし土の摩擦力や岩石の強度がそれを上まわっているために崩れないで支えられています。雨や地震などでそのバランスが崩れると地すべりや山くずれを引き起こします。 雨による大規模な山崩れの発生は、地下水が最も上昇する数時間から1-2日後に発生する危険がありますので、雨が上がったからといって安心してはいけません。

土石流
・山から崩れた土や石が、水といっしょになって、ものすごい勢いで流れ下ってくる。

地滑り
・やや傾斜のゆるい斜面が、広い範囲にわたってかたまりのまま動く。

河道閉塞(天然ダム・土砂崩れダム)
・崩れた土砂が川をせきとめる

前兆現象
土砂災害が起こる前に、普段と違う現象が起こることがあります。一例ですが以下のような前兆現象があった場合は周りの人や自治体に連絡して安全な場所に避難しましょう。

前兆現象の例

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