地図を使って、いろいろな災害リスクについて考えてきたけど、地震を考えたときに一番大切なのが…。
耐震(たいしん)性!
そうだね(笑)!耐震(たいしん)基準をクリアしているかどうか、が、家選び部屋選びで大切だよね!では、耐震(たいしん)基準のおさらいと、家そのものについて学んでみよう。
は~い!
こっちはカッコいいけど、やっぱりシンプルなほうが揺(ゆ)れには強いんじゃないかな?
そう!一般的に、ある程度の高さで、家をスパッと切った時の形が、大きな四角形の組み合わせになっていたり(平面形状)、一階と二階が同じような形だったり、二階が一階の真ん中に乗っかっているような(立面形状)家など、シンプルな四角形で書くことができる家が、バランスがよく地震にも強いと言われているんだ。
他にも鉄筋(てっきん)コンクリート造りのマンションなんかも、あまり奇抜(きばつ)なデザインは十分な耐震(たいしん)性の確保が必要だね。一階部分が店舗(てんぽ)や事務所、駐車(ちゅうしゃ)場になっていて二階以上が住居、といった複合建物も一階の耐震(たいしん)性が問題になることが多いよ。
昔の地図で地盤(じばん)を知って、建物の形を見るだけでも、ある程度想像できるんだね!
そうだね!みんなが大学生になった時や働き始めた時、一人暮らしの部屋を決める時には、いつできた建物かと一緒に、建物の形というのも参考にしてみてね!
夢の一人暮(ぐ)らしね~!
建物、つまり家の造りに興味が出たかな?昨今の家の作り方には、木材の柱や梁(はり)で組み立てる「在来軸(じく)組工法」と呼ばれる建て方や、決まった寸法(すんぽう)の規格材を使う2×4(ツーバイフォー)工法。ほかにも、構造を鉄骨(てっこつ)で造る「鉄骨(てっこつ)造」と呼ばれる建て方も増えてきているんだ。
地震に強い建物にする方法はいろいろあるけど、その一つ在来工法の「筋交(すじか)い」(建物を強くするために、柱の間などにななめに交差させてとりつけた木材)という、家の強度を高める方法を紹介(しょうかい)するね。この実験映像を見てみて!
「筋交(すじか)い」の有無でこんなに差が出ることをイメージできたかな?
家のつくりって、面白いね!
そうでしょ!では、建築士さんにいろいろお話を聞いてきみよう!
災害に強いっていうのは大切なことなんだね!どんどん新しい技術が生まれてきそう!
私とダーリンの新居もこれで安心ね~。
そういう新居を買える経済力があればね~。
たしかに…。
気を取り直して(笑)、災害はいつ起きるかわからない!経済力も必要だけど、未来のある君たちにとっては、大切な人を守れる場所や家を選べる。そういった防災力を身に付けた人生を目指さなきゃいけないってことだよね!
大切な人を守るかぁ…なんか、かっこいいな!
私たちが作る未来だもんね!
私のダーリンにも学んでもらわなくっちゃ!
あんたの場合、まずは、ダーリン見つけるところからね…。
ちょっと専門的な話になりますが、もう少し家の災害リスクについて掘り下げていきます。
地震で壊れにくい建物を造る方法は、建物にかかる地震力をどのように扱うかで決まります。
免震…建物と地面の間に揺れを直接伝えないようにする装置を設置し、建物自体の揺れを軽減することで壊れにくくすることです。つまり、揺れないようにする建物です。
制震…建物内にダンパーと呼ぶ地震エネルギーを吸収する装置を設置し、建物自体の揺れを抑えることで壊れにくくすることです。
ちなみに、昔からの木造建築で貫構造といわれる伝統工法で建てられている建物があります。この工法は垂直な柱に水平な貫を貫通させた造りで、接合部が動くことで揺れを吸収する制震構造と言えます。
耐震…建物の壁に筋交いや構造用合板を取付け、柱や梁をそれぞれにかかる力に対抗する金物で補強して建物を堅く丈夫にすることで、壊れにくくした建物です。
建物を建て替えずに、耐震補強工事をすることで耐震性は増しますが、建物自体が丈夫でも揺れが直接伝わるため、家具転倒など室内の安全対策は十分に行わなければなりません。
さて、古い建物すべてが耐震性に不安があるわけではありません。しっかり丈夫に作られた建物もあります。そうした建物をリフォームするときに注意してほしいのが、「お化粧より耐震」です。壁紙を張り替えたり、床をフローリングにしたりする際に、住まいの耐震性についてもしっかりチェックしましょう。
また、安易に部屋を広くしたり、窓を開けたりすることで、構造上重要な壁や柱を取り除いたり移動したりすることにつながるケースをよく見かけます。リフォーム工事の際には既存建物の構造をしっかり調査した上で、耐震強度を落とさないことが大切です。
住宅の壊れにくさを計算する方法に、壁量計算というものがあります。壁量計算は地震力や風力のような水平方向の力に建物が耐えられる壁量を満たしているかを検討する方法で、主に木造二階建て以下の建物で用いられます。
一般的な木造戸建て住宅の構造の安全性のチェックは、壁量計算のほかに、壁配置のバランス(四分割法)、引き抜き力に対抗する柱の柱頭・柱脚の接合方法の三つの計算方法で確認します。
国土交通省が過去の地震記録などをもとに、地域別に定めた耐震強度の「補正係数」のことを言います。鉄筋コンクリート造等の建物の場合は東京、大阪、神奈川などを「1.0」とし、地震の比較的少ない地域では、この係数を「0.7」~「0.9」としています。
例えば、「0.7」の沖縄は「1.0」の地域に建てる建物より3割も耐震強度が低くてもいいということになります。逆に、静岡県では東海地震の危険性が1970年代から指摘されているため、任意規定ですが係数を「1.2」で設計するようにと指導されています。
新耐震基準であっても、この地震地域係数での割引の有無も建物の安全性の確認においては大切なポイントになります。木造2階建て程度の建物では、この係数とは関係なく上記の壁量計算などで全国一律の耐震強度が求められます。
住宅の耐震性が非常に大切ということを学んできましたが、耐震診断をいきなり専門家に依頼するのはちょっと…と思われる方は、ご自身でも耐震性能をチェックできるリーフレットが(一財)日本建築防災協会から発行されました。昭和56年6月から平成12年5月までの間に建てられた木造住宅を対象に検証できます。
簡単な独自耐震診断や建築士協会のホームページで自己診断できるサービスがあります。お住まいの自治体によってはプロによる診断をお願いした時の費用助成がある場合もありますので、窓口に相談されるといいでしょう。